シノン公爵バーンストル

 セヴァール会戦においてレイア王カルマンはセヴァール川とセルジア台地に挟まれた天然の要害に本陣を構え、両脇に精鋭部隊を配置して鉄壁の守りを誇っていた。しかしこの地に本陣を置くことを予想していた聖騎士バーンストル(571-619)は、モルディアスの許可を得て配下の騎兵100騎余と共にセルジア山中に潜み両軍が河を挟んで対陣した翌早朝、崖を駆け下って奇襲をかけた。
 前日の疲れで眠り込んでいたレイアの兵士たちは 霧の中から突然現れた騎士団の姿に驚き大混乱に陥る。 バーンストルは自らも多くの手傷を負いながら、 レイア王の本陣に切り込みその首を討ち取った。
 彼はこの時の武勲により、公爵位を下賜され 王国の直轄地であった辺境領シノンを領して 新たな公国(606-621)を興すに至る。

 シノン地方は草原地帯で主に牧畜を生業とする複数の先住部族が存在する。 この地方が王国に服属したのは半世紀あまり前であるが、 この地に暮らす先住騎馬民族は、誇り高く、勇猛な人々であり、 過去にも数名の王国貴族が封建領主として赴任したが、 先住民の反乱により殺害された。

 力による支配は無理と見た先王は、王国の属州にして 隣国のセレニア公国にその管理を任せ、 セレニア公爵もまた諸部族の自治を認めるるという形での放置状態にあり、バーンストル公爵による建国・統治は、このような厳しい状況の中で行われたため王国内では誰もが、失敗して逃げ帰るものと噂していた。

 バーンストルは赴任するとすぐに族長たちを招集し、 自らの方針と彼らの要求をすべて書き出して文書にした。 可能なことはすべて受け入れ、合意した事項を基本法として これを破る者はたとえ部族長であろうと処分すると 法治国家としての体制を築いたのである。

 また先住部族の若者たちを、文官・武官として大量に採用。 公爵自ら僻地にいたる全土を視察して回り、 困窮する住民には食料や家畜を分け与えた。 (隣国セレニアのルーヴェト公爵は国を上げてバーンストルを支援した)

 こうした諸策により最初は反抗的であった草原の民たちも 新しい領主バーンストルを信頼し、 リースがナルヴィアに旅立つ頃(治世12年)には 小国ではあるが豊かで安定した国に生まれ変わっていた。
 ちなみにアデル・レオン・シロックらは 先住部族の若者たちで少年のころにバーンストルによって見出され 教育を受けた者たちである。

 バーンストルはヴェリア北方の小村を領する下級貴族(小領主=騎士)の三男として生まれた。(ヴェリア暦571年生)幼い時は思慮深く大人しい少年だったが剣技については生まれついての才能が有り、15歳で家を出たのちは各地を放浪して自由騎士(傭兵)として戦いの中に身を置き続けた。
 匪賊の襲撃に怯える辺境の街や村に好んで雇われ、他の傭兵なら一日で逃げ出すような危険で見返りの少ない仕事でも誠実に果たし、その誠実なる振る舞いとずば抜けた強さで人々を魅了して多くの知己を得た。

 辺境警備隊長だったウォードと最初に出会ったのも傭兵時代のことであり、リアナ国王と盟友になったのも(リアナ国の動乱時に王子だった現国王を助けた)戦死した親友(自由騎士)から息子(エルバート)を託されたのもこの時期である。

 彼の名声を聞きつけたヴェリア王ハーメル7世はバーンストルを王宮に呼びつけ国王直属の臣下となって近衛部隊を指揮せよと命じる。バーンストルは固辞するが王の強い求めで26歳にして王宮の近衛隊長(このころに妻を迎えた)、3年後の王国暦600年には王国聖騎士となり(同盟24国で行われる槍試合を三年連続で勝ち抜いた功績による。リースはこの年に誕生)王都の傍にわずかな領地を与えられて伯爵に叙せられる。(片腕となった騎士ウォードはこのころ部下になる。あることから罪を得て処刑されるところを救ったのが理由であるがその顛末については後述)

 しかし実質的な上官であるパドルフ内務卿(後に登場するパドルフの兄)とはそりが合わず、ある日、王宮内で若い侍女をいたぶるパドルフを制止しようとして勢いあまり殴打してしまう。ひ弱なパドルフは重篤に陥り、死罪もやむなしという状況になるが、それまでは特に親しいわけでもなかったモルディアス王子が助命に動き領地での謹慎で許された。こういった経緯により、図らずもモルディアスに近い立場となるのだが、内乱後期にはパラミティースら反乱派の逃亡を助けたり流刑中のベルナードを密かに援助したりと、 心情的にはモルディアス派を快く思っていなかったようだ。

 ラーズの侵攻時には病を患い出征しておらず、 後にベルナードの腹心となって西部戦線を支えたが、ヴェリア暦の619年、竜騎士ゼフロスとの一騎打ちで戦死した。享年48。


竜騎士ゼフロス[森田氏の原画から]

ゼフロス2
プロフィール

zeeksweb

Author:zeeksweb
無断転載禁止
[個人の著作物を掲載しています。
文責は S_Kaga にあり、ゲームの
販売会社等は一切関係ありません]

最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
ブログ内検索